
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、まさに「朝令暮改」の言葉を体現するような指導者である。打ち出す政策はすべて修正に追い込まれ、支持率の低下にも歯止めがかからず、まさに四面楚歌の状況だ。それでもアメリカ憲法を改正して3期目を目指すようで、自身の企業から「トランプ2028」と書かれたロゴの商品を販売する有様だ。
ローマ教皇フランシスコが4月21日に亡くなり、その葬儀で弔問外交が展開された際も、トランプ大統領は服装のアコードを守らずに紺色のスーツをまとい、物議を醸した。慣例に囚われない姿勢をアメリカ中西部の岩盤支持層にアピールする狙いがあったとされるが、結局は世界各国の首脳から、冷ややかな視線を浴びる結果に終わったようだ。
トランプ政権の政策を動かすブレーンたち
トランプ大統領の周りには、多くの政策ブレーンがいる。通商面では貿易・製造業担当上級顧問を務めるピーター・ナバロ氏や大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長であるスティーブン・ミラン氏、通商代表部(USTR)の代表であるジェミソン・グリア氏などが、また財政面では財務長官を務めるスコット・ベッセント氏が影響力を持つ。
一方で、トランプ大統領の発言が揺れるのは、政権のブレーン間でパワーバランスがガタついているからだろう。ナバロ氏らが声高に主張してきた、いわゆる「相互関税」に代表される一連の保護主義政策は、結果的にアメリカ国債が持つ信用力を低下させて、アメリカの金融市場から多額の資本が流出するという、最悪の結果をもたらした。
そこで金融市場に明るいベッセント氏が影響力を強めたというのが、一般的な理解となっている。とはいえ、このままナバロ氏らが息を潜める展開は想定し難い。政権内の対立のみならず、議会共和党なども巻き込む形で、政権運営の混乱はまだまだ続くだろう。そしてその混乱に、世界経済は今後しばらく振り回されることになりそうだ。
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